今回は公務員建築職について、どうすればなれるのか、給与や職務内容について話をしていきます。筆者は市役所と特別区(東京23区)の職員でした。
公務員の建築職は国土交通省などの国家公務員と、都道府県や市区町村の役所に勤める地方公務員の2種類あります。
建築職公務員になるためには
建築職の公務員になるためには、もちろんですが一般の事務職の方と同じく公務員試験を受けなければなりません。
今回は東京都庁と特別区(東京23区)の一般採用(大学学部卒業程度)を例にみていきます。
そのほかに自治体によりますが、高卒枠や大学院卒枠や民間企業などからの経験者枠など用意があります。
スケジュール
令和4年度 東京都職員(東京都庁)1類B採用の場合 ・採用予定数10人(行政(事務職)360人) ・年齢 22歳~29歳 4月1日申し込み受付 5月1日第1次試験 6月8日 合格発表 6月24日から7月1日の間で1日 第2次試験 7月15日 最終合格発表
令和4年度 特別区(東京23区)1類の場合 ・採用予定数 62名程度(事務職983名程度) ・年齢 22歳以上32歳未満(翌年4月1日時点) 3月18日~4月4日 申し込み受付 5月1日 第1次試験 6月24日 合格発表 7月5日~7月14日の間で指定する1日 7月26日 最終合格発表
第1次試験日を見てもらうとわかるように、都庁と特別区は同日開催なので、併願することができません。こんな感じで、政令指定都市など併願できないことがあるので注意です。
例えば都庁と横浜市と国家公務員といった併願はできますが、横浜市、川崎市の併願はできないといった感じです。詳しくは各自治体の募集要項をご確認ください。
試験内容
こちらは都庁、特別区同じような内容なのでまとめて
(第1次試験) ・教養試験 知能分野:文章理解、判断推理、資料解釈、空間把握など 知識分野:人文科学、社会科学、自然科学、社会事情など ・専門試験(建築関係の問題) ・論文 (第2次試験) ・口述試験(個別面接)
公務員試験なので、建築分野とは関係ない一般教養の試験もあります。建築関係の専門試験と論文試験があるというのが一般的な1次試験になっていますが、近年では民間企業等の経験者を多く採用していこうという流れがあり、そういった人が試験対策を少なく受けられるように、専門試験のみであったり、論文や面接のみで受けられる自治体や採用枠があったりもします。
合格率
東京都庁 1類B採用試験 建築 4.5倍(事務13.7倍)(令和3年度) 特別区 1類採用試験 建築 1.4倍(事務 3.6倍)(令和4年度)
最終合格率はこのようになっています。参考として事務職の倍率も併記しましたが、わかるとおり事務職よりも入りやすい結果となっています。毎年こんな感じです。
特に特別区で言うと例年2倍前後となっており、非常に入りやすくなっています。
給料
初任給 約220,400円
高いように見えますが、これは地域手当を加えた金額です。実際に税金引かれると18万前後になります。
地域手当とは? 都会など物価の高い地域で働く場合に支給される手当のようなものです。全国では、東京23区が一番高く給料の基本給に対して20%が加算されます。
同じ公務員でも、田舎の方だとこの地域手当がありません。かといって都心の自治体に勤めるとその分物価が高いので、あまり気にしなくていいと思います。
また、新卒よりも年齢が上の人や前職がある人なんかは、その分加味されて給料が高くなります。
職務内容
次に主な職務内容として、大きく3つの分野があります。
1、建築基準法を扱い、建築確認や違反指導などを行う建築審査系(建築指導課とか審査課とか自治体によって名前は異なります。)
設計事務所から法律の相談を受けたり、確認の図面審査、中間・完了検査のために現場に赴いたり、不動産屋の仕事を手伝わされたり、住民からの苦情を受けたりする部署です。市役所も区役所も経験し、公務員友人と話をしても、暇な審査系部署は無い、なんなら激務の印象です。
しかし、建築基準法を扱うため建築職の花形として、異動希望の人気部署でもあります。中にいる人も異動して出ていきたいと思っているため非常にカオスな状況が生まれています。
2、公共建築物の計画、設計、工事、維持改修を行う営繕系(住宅課、教育委員会、営繕課、管財課など)
公共工事を扱う部署です。自分たちの自治体が所有している建物の維持補修や数少ない新築物件の計画から設計、工事監督を行います。設計や工事といっても実際にはほとんどを設計事務所や建設会社にやらせるため、入札のための書類をまとめる作業を行います。設計事務所がやってくれないような極小の改修工事なんかは自分たちで図面を描きます。なので役所に入って、図面を描きたいとか、工事監理をバリバリしたいなんて思って入庁するとがっかりするかもしれません。実際には、業者と事務職である所管部署職員との架け橋みたいな役割になります。
とはいえ役所の中では数少ない建築っぽいことをしている部署なので、こちらも人気なイメージです。自治体によりますが、建設課や営繕課といった名前で建築担当と機械担当、電気担当が所属しているパターンと、そういった部署がなく、各事務系部署に建築担当を分散配属させるパターンがあります。
3、都市計画や再開発、まちづくり系(都市計画課、市街地整備、まちづくり課など)
都市計画法だったり再開発を担当する部署です。建物といったミクロな仕事ではなく、その自治体全体だったり、小さくても1街区といったマクロな規模の仕事になります。町全体のことを決定したりするので、どこも部長室に近いのが都市計画課で、よく部長との打ち合わせをしているイメージがあります。なので自治体によっては都市計画系の部署こそ花形だとも言われています。
公務員建築職はおすすめなのか
ここまで公務員の建築職というマイナーな話をしてきました。公務員建築職のメリットやりがいとしては、
・町全体の仕事であったり、法律条例など設計事務所やゼネコンでは経験できないスケールの大きな仕事があります。 ・公務員には異動がつきものなので、様々な部署を経験することができます。 ・建物を建てて終わりではなく、維持補修していく中で得られる知識があります。 ・基本的にはカレンダー通りの休み。夏休み5日、年末年始6日休みなどほか福利厚生も充実。
逆に、辞めた私だからこそ言える、デメリット、後悔したところは
・異動があるということは、嫌な部署に行かされるということも、行きたい部署に行けないこともあるということ。 ・建築基準法を扱うといっても、指定確認検査機関がほとんどを審査しており、審査経験数が少なくなってきている。設計事務所やゼネコンと仕事してもそれぞれの知識経験には到底たどり着けないことを感じる。 ・土日祝休み、残業なしのホワイトをイメージして入庁すると、休日出勤有りの残業予算切れの部署にあたったりする。
大学卒業後、役所に入庁した私としては、こういったことを感じていろいろあって辞めました。私はたまたまそこまで忙しくない時期の忙しくない部署に配属されていたこともあり、業務量に不満はありませんでした。
審査系の部署にいても、検査機関からの問い合わせに答えられなかったり、設計事務所やゼネコンの知識経験値の違いを感じたり、このまま定年までいていいのかと思うようになりました。
前述のように、近年では新卒ではなく民間企業等からの経験者を多く採用している背景もある通り、役所側も即戦力を欲しているように思えます。設計事務所やゼネコンを数年経験し、結婚だったり激務だったりをきっかけに転職してきた人は、やっぱり知識経験がすごいです。
新卒採用の枠に関しても、年齢の上限の引き上げがなされたりしています。また、公務員試験の倍率の低さからも大事な新卒カードを切って公務員になるのはもったいないと感じます。
また今度公務員時代の話とか詳しく書いていきたいと思います。