今回は「建築基準適合判定資格者」とその検定・合格率について話していきます。
建築基準適合判定資格とは
建物(設備や工作物も)を建てるときに建築基準法やその他関係規定を守らなければなりませんが、その計画が法律に適合しているかどうかを審査・検査するのに必要な資格です。ちなみに国家資格です。
法律で確認すると建築基準法第5条より
「建築基準適合判定資格者検定は、建築士の設計に係る建築物が第6条第1項の建築基準関係規定に適合するかどうかを判定するために必要な知識及び経験について行う。」 「建築基準適合判定資格者検定は、一級建築士試験に合格した者で、建築行政又は第77条の18第1項の確認検査の業務その他これに類する業務で政令で定めるものに関して、2年以上の実務の経験を有するものでなければ受けることができない。」
ここで建築基準法第6条第1項が確認申請のこと。第77条の18は民間の指定確認検査機関の話をしています。
つまりまとめると、この資格が必要な人は、役所や指定確認検査機関と呼ばれる民間の検査会社に勤める人で、受験するためには①一級建築士試験を合格し(免許取得ではない)ていることと、②審査業務を2年以上経験していることが必要になります。
建築基準適合判定資格者になるためには ・一級建築士に合格する。(免許は持っていなくても可) ・審査業務を2年以上経験している。(一級建築士になる前の経験も含む) 上記2点をクリアし、検定(試験)に合格しなければなりません。
また、都道府県や市区町村の職員の場合、この資格を「建築主事」と呼び検定のことを「主事試験」と呼びますので、どう呼ぶかで出身がわかりますね。
建築基準適合判定資格者検定について
続いては実際に検定(試験)の話をしていきます。
建築基準適合判定資格者検定(主事試験)は2つの試験、考査A・考査Bによって構成されています。
考査Aでは、建築法規・審査に関する五肢択一問題が17問(34点)
考査Bでは、3つの計画について実際に図面、面積表、構造計算書を与えられ、各審査項目について適合・不適合を審査する試験となっています。
〇考査A 10時00分から11時25分(1時間25分)
五肢択一の17問34点
一級建築士の試験を見たことがある人は、学科Ⅲ法規だと思ってもらえればだいたいイメージがつくと思います。ただ出題範囲は、一級建築士試験と異なり、建築基準法(主に確認審査手続きや違反指導)とバリアフリー法、省エネ法、消防法のみからの出題となっておりその他関係法令(建築士法、耐震改修促進法、住宅品確法、建設業法など)は出題されません。
これは一級建築士に必要な法規の知識ではなく、審査側として必要な知識を問われるからということですね。
試験時間は1時間25分と1問あたり5分となっています。最初は時間が足りないと感じると思います。本番までには1問あたり4分を切るペースで解いて、最後20分程度は見直し時間とすることができるようになるといいと思います。
〇考査B 12時35分から16時00分(3時間25分)計66点
・計画1(木造)
・計画2(非木造)
・計画3(構造)
の3計画についての図面、面積表、仕上表、構造計算書が与えられ、審査をし、適合・不適合の判定とその理由を記述します。
まさに実際の審査っぽい試験になっています。配点も100点中66点と考査Aよりも大きくなっています。試験時間を見てもらうと長いと思いますが、これがやってみると時間が足りないぐらいに、図面や問題文を眺め、法令集の条文を引き、とにかく書き続ける試験となっています。
検定地
試験内容の説明に検定地って必要かって思うかもしれませんが、下記をご覧ください。(令和4年度)
そう実は受験者数が少ないため、各都道府県で検定は実施されず9道府県でしか行われないんです。
県内に検定会場がある場合でも一級建築士試験のように複数会場あるわけではないので注意が必要です。特に指定された検定会場まで日帰りで行けない場合は、前日から移動し宿泊が必要です。
さらに検定日は例年8月最後の金曜日です。検査機関の人は会社が休みや移動費出してくれるんすかね?役所はというと休みも交通費も出してくれないところがあるだとか...
人によっては県2,3個超えなきゃいけないの大変ですよね。ただ某県に住む知人は、交通費無料で都心に出れて、試験が終わって華の金曜日を楽しめるのが逆に良いんだとか。
受験料
受験料は3万円(収入印紙)になります。一級建築士の1万7千円にくらべるとだいぶ高いですが、市区町村又は都道府県の職員は無料です。
これは平成10年まで確認検査業務は役所のみの業務であったことの名残です。
試験スケジュール
5月末 受験申込書の交付開始
6月上旬 受験申込
8月上旬 受験票送付
8月最終金曜日 検定日
12月下旬 合格発表
合格率と難易度
合格率は下記のとおり例年30%前後となっています。
一級建築士の総合合格率が約10%、二級建築士の総合合格率が約25%であるため、それに比べると易しいと感じるかもしれません。ただし前述のとおり受験資格として一級建築士試験に合格していることが必要であるため、無資格から建築基準適合判定資格者を取得しようと考えると難易度の高い資格かもしれませんね。
また、考査Aは一級建築士試験でいう学科Ⅲ法規に似た試験ではありますが、建築士として必要な知識を問われる一級建築士試験とは異なり、審査側としての必要知識を問われる内容となっており、出題範囲が異なります。
考査Bも独特な試験科目で、試験時間も長く、記述量がとても多い科目となっています。
またその他の資格試験と異なり、受験者数が少ないため、講座を扱っている予備校等が極端に少ないという点があります。そのことにより、検定の情報収集や、対策を練ることを難しくしています。
しかし、勉強量は一級建築士と比べると圧倒的に少なく、勉強期間も人それぞれですが、1か月から半年弱程度で受かると言われています。また、難易度が高くない理由は合格基準点にあります。
合格基準点は例年67年で、全体(100点)の2/3を超えればよい試験となっています。
どのネットブログや先輩職員に聞いても口をそろえて言うのが、
「考査Aを満点とれば(34点)考査Bは半分(33点)とれば合格できる(67点)」というものです。
実際考査Aは一級建築士の法規試験と同様、法令集と告示編の持ち込みが可能で、試験範囲も絞られています。
考査Bは、記述量が多く、対策が多く必要な科目でありますが、考査Bのうち計画Ⅰ(木造)と計画Ⅲ(構造)はパターン化しており、数年分の過去問演習で十分に満点が狙えます。
〇難しい点
・受けるために一級建築士合格と、審査実務経験が必要
・予備校が少なく、対策のための情報収集などが難しい
・考査A、Bともに試験時間が短く、時間切れの場合もあり
〇易しい点
・合格率が30%と、一級・二級建築士よりも合格率が高い
・予備校がほぼ無く、受験生のほとんどが独学のため、過去問演習のみで合格が狙える。
・勉強期間も最短1か月から半年程度と短い
勉強方法
過去問
・国土交通省に公表されている過去問を入手(無料)
無料で入手できるが、印刷が必要で答えと解説がないのが欠点。
・一般財団法人 建築行政情報センターICBA発行の「建築基準適合判定資格者の手引き」を購入する(3,630円)
おそらくこれが主流。過去5年間の問題と解説が載っている。会社でも役所でももちろん毎年分置いてあるよね?
・株式会社ERIアカデミーの受験対策講座(10~20万?)
令和3年度の合格実績は公式HPより46人合格/93人受験(49.5%)とあるので、受験者全体の10人に1人がERIアカデミー受講者で合格率は全国平均の1.7倍といったところでしょうか。
やはり大手検査機関が行っている講座ということで信頼感がありますよね。ただ大多数の受験生(9割)が独学の道を選んでおり、10数万のお金と5か月程度の期間をかけても半数の受験生が落ちているというのは合格率が低いように思えます。
・特定非営利活動法人 建築基準法の適用に関する建築主事ネットワーク(BONT)の開催する模擬試験に参加する。(8,000円)(東京大阪の2会場、7月の各一回ずつ)
過去問を数年分解いたことがありますが、難易度は考査AB共に難しめに設定されているように感じました。いつもとは違う環境で本番を意識して行えるので、会場の近くに住んでいるならおすすめだと思います。