学科Ⅱ 環境・設備の第1回日照と日射についてです。小学校の理科で勉強したような、太陽の位置だとかを一級建築士でも勉強せなあかんのです。
〇波長
波長とは光線、波の1セットの長さのことです。太陽から届く光には、様々な波長の光が地球に届きます。その長さの違いによって呼び名が変わります。
・紫外線:波長380nm(0.38μm以下) 消毒などの作用がありますが、日焼けもしてしまいます。
・可視光線:波長380~780 nm(0.38μm~0.78μm) 文字のとおり見ることができる光です。
・赤外線:波長780nm(0.78μm以上) 熱線ともいわれるように熱の作用があります。
〇太陽位置
太陽高度:地面からの高さ方向の角度
太陽方位:南を基準とした東西方向の角度
南中高度:太陽か真南の位置にある時の角度
夏至は春秋分日の出、日の入りが北側に約30度(1時間15分)ずつずれ、冬至は南側に約30度(1時間15分)ずつずれる。
〇日照
日照時間:日の照っていた時間(晴れだと長い、曇りだと短い)
可照時間:日の出から日没までの時間(天気は関係なく時期によるもの。日を照らす事が可能な時間)
日照率:(日照時間/可照時間)×100〔%〕
建物においては、採光が不利になる冬至においての日照時間を得るために必要な南北間隣棟間隔比(:南北間の距離Dを南側建物の高さHで除したもの)が緯度によってそれぞれ必要になる。
一般的に冬至において4時間の日照が標準となるので、東京の場合の隣棟間隔比は約1.9となる。
〇方位ごとの壁面の可照時間
周囲に障害物がない場合の各方角の壁面の可照時間はどのくらいかというとこうなります。
夏至は北東側から日が昇り、北西側に落ちていくため、北面の壁にも日が当たります。さらにいうと南面の可照時間が北面と比べ短いことに注意。またその時間は、冬至の南面の可照時間のほうが長くなる。
夏至の四角で囲った8時30分と15時30分はそれぞれ真東・真西に太陽が来る時間です。
試験対策としては、表の時間を覚えるのではなく、日の出日の入り時間から可照時間を求めるのがおすすめです。まず基本の春秋分から、日の出日の入りが真東から真西へ6時6時(18時)の12時間南面に日が当たります。東西面はその半分。
次に夏至と冬至の覚え方ですが、日の出日の入りがそれぞれ春秋分から1時間15分だけずれると覚えます。そうすると冬至は7時15分から16時45分の9時間30分南面に日が当たります。
夏至の場合、真東と真西に太陽が来る時間を追加で覚えないといけないのですが、日の出が6時より1時間15分早く4時45分。そこから真東に来る8時半までの3時間45分間は北面に日が当たります。8時30分から15時30分までの7時間は南面に当たり、15時30分から日の入りの19時15分までの3時間45分は再度北面に当たります。
〇n時間日影
n時間毎の日影の交点を結んだ範囲をn時間日影といい、交点を結んだ曲線をn時間日影曲線という。
建物による日影の範囲の広さは、建物の高さより、建物の東西方向の長さに左右される。
〇島日影
2以上の建物が東西方向に離れて並んでいる場合、それぞれの建物から離れた位置に、その周りよりも日影時間が長い範囲のこと。
〇日影曲線
下の図は、各時期に原点からどういった影を落とすかを表したものです。さらに影の長さまでわかるものです。
建物が原点にあったとして、冬至の日の10時の影の長さを見てみます。冬至の青線と10時の線の交点が影の位置です。交点の位置から円周に沿って目盛まで移動すると1.9らへんだと思います。これは影の長さが建物高さの1.9倍ということです。
もう一つわかることが、影の真北方向の長さです。先ほどの冬至の線と10時の線の交点から真横に12時の縦線まで移動すると、その位置がだいたい1.6の位置です。同様に真北方向の影の長さは建物高さの1.6倍ということになります。
〇終日日影と永久日影
一日中日が差していたと仮定して、それでも一日中日陰であった部分を終日日影といいます。
太陽光が北側からも差し、太陽高度も最も高くなる夏至の日においても終日日影になってしまう範囲は、一年中、つまり永遠に日が差すことがないので、永久日影といいます。
この永久日影は、北側に大きな凹みがあるとできやすいです。
〇日射
・直達日射:太陽から直接届く日射のこと
・天空日射:空気中の水蒸気や塵埃などに当たって、散乱した日射のこと
・大気透過率
太陽定数Io:大気圏外における太陽光線に対して垂直な面が受ける太陽放射エネルギーのこと。実際には約1,370W/㎡
大気透過率P=地表面が受ける直達日射量Ⅰ/太陽定数Io
〇実効放射(夜間放射)
実効放射(夜間放射)=地表面放射-大気放射
地表面放射とは、地面が大気に向かってする放射のこと。大気放射は、逆に大気中の水蒸気や二酸化炭素が地面に向かってする放射のこと。
要は、地面からの放射か大気からの放射どっちが大きいのかというものです。夜は大気よりも地表面放射のほうが大きいため地面の温度が下がります。またこれを夜間放射ともいいます。
夜間放射という言葉に惑わされないでほしいのが、日中でも実効放射は存在します。
また、大気放射は、雲の量が多いと大きくなります。雲の位置が低いほど大きくなります。
大気放射が大きくなると、実効放射(夜間放射)は小さくなります。
〇南中時の直達日射量
入射角:受照面に対する垂直方向と日射の角度。垂直に入射する場合は入射角0°となります。
直達日射量は入射角が小さいほど(面に対して垂直に近いほど)大きくなります。
直達日射量の大小は、入射角小さい順に大きくなりますので、夏至水平(12°)>冬至垂直(31°)>冬至水平(59°)>夏至垂直(78°)となります。
〇壁面ごとの終日直達日射量
数年に1度は出る頻出範囲です。
先ほどやった壁面ごとの可照時間ではなく日射量になるので別もんです。
出題としては、夏至や冬至における各面の大小が問われます。
ここからは似たような名前の率やら係数が出てきます。覚えづらいということは、よく出題される部分ですので、文字の意味を考えて覚えてみてください。
〇日射熱取得率
窓ガラスに入射した日射量に対する、透過した日射量と室内に再放射された熱量の合計の割合のこと
〇日射遮蔽係数
厚さ3㎜の透明ガラスの日射熱取得率を1.0(基準)とし、各ガラスの日射熱取得率の割合を表したもの。
日射遮蔽係数 =(任意の日射遮蔽物(ガラスなど)の日射熱取得率)/(厚さ3㎜の透明ガラスの日射熱取得率)
日射遮蔽係数の値が大きいということは、日射熱取得が大きいということなので、遮蔽効果は小さいということになります。
遮蔽係数といってるくせに、その値は日射熱取得率を使っているから係数の大小が、遮蔽効果の大小とは逆になっているんです。
ブラインドの日射遮蔽効果は、反射率の高い明色のほうが、暗色よりも大きい。
この場合、日射遮蔽係数は小さくなります。
〇庇・ルーバー
南面窓には、庇や水平ルーバーが有効。西面窓には、可動式鉛直ルーバーが有効。
ブラインド・熱反射ガラス・熱線吸収ガラス・Low-Eガラス
遮蔽の基本は、室内に入る前に室外で遮る方が効果が高いということです。
熱線反射ガラスと熱線吸収ガラスの熱貫流率は、普通の透明ガラスとほぼ同じのため、冬期における断熱効果は期待できません。
〇Low-E(ローイー)ガラスとは
ガラスの表面に金属膜をコーティングしたガラスのことです。
その金属膜が日射の長波長域(赤外線)を反射させることで遮蔽効果を得るというものです。
一般的には複層ガラスの片方にこのLow-Eガラスを用います。そしてコーティングした面を中空層に向くよう配置します。
Low-Eガラスを屋外側に配置した場合は、日射の多くを反射させることができるため夏期の日射遮蔽効果を高められます。反対に、屋内側に配置した場合は断熱効果が期待できるため冬期向きとなります。
普通透明ガラス
一般的な板ガラスは300nm~3,000nmの太陽光を80%程度透過させます。
3,000nmを超えると透過率は急激に低下します。
これを利用したのがビニールハウスです。太陽光を多く室内に取り入れ、暖められたのちに再放射されたものは3,000nmを超える長波長となるので、屋外に出ません。そのため室温が上がるという仕組みになっています。