建物の設計・監理をする建築士の最上級資格「一級建築士」とはどういった資格なのか。 また一級建築士になるためにはどうしたらよいのか話していきます。
一級建築士とは
一級建築士について、まずは法律上の定義を見ていきます。
「一級建築士」とは、国土交通大臣の免許を受け、一級建築士の名称を用いて、建築物に関し、設計、工事監理その他の業務を行う者をいう。 (建築士法第2条第2項)
となっています。国土交通省の免許とあるように国家資格です。
建築士にはそのほか「二級建築士」と「木造建築士」という資格が存在します。
資格ごとに設計できる建物の種類、規模が法律で規定されています。
設計・監理できる建物規模
一級建築士、二級建築士、木造建築士の3種類の建築士資格がありますが、大きな違いは下表のとおり、設計できる建物の構造・規模・用途が異なります。
この3つの資格には優劣があり、一級建築士 > 二級建築士 > 木造建築士 となっています。よって、例えば下表の「C」二級建築士でなければ設計できない建物については、一級建築士資格を持って入ればもちろん設計してもよいが、木造建築士は設計してはならない。ということになります。
「一級建築士」は建築士の中で最上位の資格であり、すべての建築物の設計・監理を行うことができる資格となっています。
試験概要
一級建築士になるには、年に一度行われる試験に合格しなければなりません。試験は「学科試験」と「設計製図試験」の2つあり、学科試験に合格した者のみ設計製図試験を受けることができます。
大まかなスケジュールは下記のとおり
- 4月頃 受験申込
- 7月下旬 学科試験
- 9月上旬 学科試験合格発表
- 10月中旬 設計製図試験
- 12月下旬 設計製図試験合格発表(最終合格発表)
〇直近五年間の試験結果
表のとおり、総合合格率が10%前後と取得が難しい国家資格となっています。
〇学科試験
一次試験である学科試験は、5科目125問 四肢択一(マークシート方式)となっています。配点は下記のとおり
特徴的なのが、科目によって問題数と試験時間が違うというところ。試験時間も学科ⅠとⅡ、学科ⅣとⅤは同じ時間に行われます。
続いて合格点についてです。学科試験には基準点、つまり足切り点が存在します。足切り点は基本的に、問題数の半分超ですが、問題の難易度によって±1点前後します。
合計点は、試験元より90点程度と発表されていますが、過去10年間では87点から97点と大きく開きがあります。こちらもその年の問題の難易度によって調整されるものですが、本当のことを言うと毎年の合格者数を一定にするためです。
〇設計製図試験
二次(最終)試験である設計製図試験は、建築士らしく実際に図面を描く試験となっています。どんな建物を設計するかというと、毎年学科試験直前の7月中旬ごろに試験元から課題が発表されます。
発表されるのは、下記の「課題名」と要求図書(1階平面図・配置図、各階平面図、断面図、面積表、計画の要点等)、注意事項等です。近年の傾向としては、ざっくりとした課題名と要求図書の表現が各階平面図という表現になり、建物の使われ方や階数が予想しづらいという点があります。
学科試験免除期間の延長について
先ほど学科試験を合格しなければ、設計製図試験を受けることができないと説明しましたが、設計製図試験に落ちた場合、もう一度学科試験を受けないといけないわけではありません。学科試験を受かった人は学科試験の受験が免除されます。
今までは学科試験合格後、その年を含めて3年間、最大3回設計製図試験を受けることができました。令和2年度の建築士法改正によって、学科試験合格年を含めて5年間のうち3回を自分で選んで受験することができるようになりました。
こちらの改正は、期間の延長により自分の仕事や昇進、結婚、出産などの都合に合わせて受験する年を選ぶことができるようになりました。これまで通り連続で3回受けることもできますので、緩和といえるでしょうが、個人的にはよっぽどの理由がない場合を除き、学科合格から連続して受けるべきだと思います。学科試験を突破した知識のまま設計製図を受けるべきですし、設計製図試験がダメだった場合に感覚を忘れないうちに再挑戦すべきだと思います。