一級建築士設計製図試験 合格時の課題文・エスキス用紙を公開

一級建築士 設計製図試験課題発表までもう少し

試験勉強お疲れ様です。一級建築士学科試験まで2か月を切りました。学科試験受験生は、学科合格後2か月で設計製図試験を受けることになります。長期にて勉強されてる方も、課題がわからない現状、様々な建物を通して設計力を磨かれているかと思います。

筆者は学科試験合格後の製図試験は不合格となり、翌年から長期講座に通い合格しました。1年目の短期の頃に全く分からず終わってしまったことと、3年目の受験はどうしても避けたいという思いから2年目は大金叩いて長期講座に通うことにしました。

結果合格できましたし、長期で学んだことは多くありました。また現在こうして受験生に試験対策をお伝えすることになりましたので、結果的に落ちて長期に通ったことは後悔していません。

短期講座と長期講座ではエスキスの仕方が違います。もはや短期講座時代のエスキス方法はほぼ覚えていませんが…

筆者も情報収集のため、様々な設計製図試験対策の方法を調べたりしていますが、具体的に課題文とエスキス用紙を公開しているところは少ないのかなと思っていますので、今回は令和2年度の本試験での課題文とエスキス用紙を公開します。作図した復元図は次回に書こうと思います。

課題文のチェックの仕方

令和2年度本試験「高齢者介護施設』の実際に使用した課題文です。一つ一つどういったマークをしたのか話していきます。

まず全体的に紫色のマーカー跡が目立つと思います。筆者が通っていた大手予備校か、教室か、講師の方針かは忘れてしまいましたが、作図終了後に図面に書き込んでいるかのチェックを紫マーカーでしていました。なので課題を解く際はこの紫部分は無視してください、

1 設計条件ほか

まず最初が設計条件などが書かれている部分です。どの課題も似たようなことが書いてあり、つい読み飛ばしそうになってしまうところですが、結構重要です。

建築主(=試験元)が「こういう建物を作ってね」といっていることなので、もちろん守らなければなりません。エスキスの考えや計画の要点に書くことのもとにもなります。

重要な部分に赤線(フリクション)を引きます。最終チェックでは、赤線など事前にチェックした部分をマークしていきます。

「道路斜線の勾配」や「建築可能面積」、「階数」「エレベーター数」などはぱっと見てわかりやすいように、横に赤字で記入しています。

面積に不算入する部分は、法令集と同じ考えで、青線としています。

2 敷地図

続いて敷地図です。

まずチェックするところは、「方位」です。基本真北が上ですが、本試験では斜めになってるかもしれません。当たり前のことも必ずチェックです。

「敷地寸法」にピンクマーク。

道路を確認して、歩道を黄色マーカー、横断歩道をオレンジマーカーとします。(細かい色訳はお任せします。)そのほか水辺があれば、公園はなんかも使用してました。

道路は重要です。歩道付き道路側を普通メインエントランス側にしたいですもんね。

敷地内にマークしているオレンジ色は「延焼の恐れのある部分」です。南、東側は隣地境界線なので、そこから3m、5m。北、西側は、道路中心からの距離なので、それをマーカーの幅でわかりやすいようにしています。

3 要求室

続いてメインとも言える「要求室」です。当たり前ですが、全て計画してくださいね。

部門ごとに色分けをしています。具体的には課題発表後にその建物用途に合わせて色分けをします。この年は高齢者施設ということで、居住計をピンク、デイサービス系をオレンジとしていました。すべての建物に共通していたのが、共用部分を黄色管理部分を青色です。

こちらも重要だという部分に赤線、細かい設備や設えなどは青丸で囲む。

文章中に「宿泊者」があると思いますが、それはピンク色に色分けした部分の人なので、ピンクマーカー、同様に「通所利用」はオレンジ部門の人なのでマークしています。

この色分けによりそれぞれの利用者の動線をどうしたらいいかがイメージしやすくなります。

床面積は「約」なのか「以上」なのか注意が必要です。約は±10%までを許容すると言われています。人によってはすべてを「以上」表現に統一するために、「約100㎡」のところに「90㎡以上」と書く人もいます。

適宜」は正直無理がなければ何㎡でもいいということなのですが、ここは最低限の面積を書いてください。エスキスの最重要なのが、延べ面積を最大に、要求室を最小にです。

延べ面積の範囲は決まってます。受験生全員同じ条件です。そこで最大で計画します。この試験は正解が一つではありません。当たり前ですが答えが無いわけありません。必ずこの延べ面積の中に要求室はすべて入ります。要求室が入りきらないと感じている人は、建築面積、延べ面積を最大で考えていますか?要求室を大きく設定していませんか?

右側欄外に各部門ごとの面積の合計と、要求室の延べ面積を計算します。これはエスキスで階の振り分けに用いる重要な数字です。延べ面積はあまり重要ではありませんが、廊下係数を一応計算します。

延べ面積の最大が3,000㎡で合計が1,472㎡なので、3,000/1,472=2.03

廊下係数1.5ぐらいが普通だと言われてるので、余裕がありそうだなと軽く思うぐらいにしてました。

最後に「その他運営に必要な室等」は「ゴミ置き場」「職員用便所」は設けるようにしていました。

4 その他

次にその他の施設、留意事項などです。

駐車場はめちゃくちゃ重要なのは言わずもがなですよね。こちらも一目でわかるように上に記載しています。

HPはHandicap Parkingの略(車椅子使用者用)、BPはBicycle Parking(自転車置き場)、SPはService Parking(サービス用)です。

5 要求図書

要求図書についてです。図面にどこまで書けばいいの?って思っている人は、ここの部分をちゃんと読んでみてください。これがすべてなければ不合格もしくは減点です。各図面に「計画上特に留意した事項について、簡潔な文章や矢印等により補足」と書いてあるため、各階平面及び断面図で最低4つはコメントを書きます。

断面図は切断位置が重要。屋上設備スペースには、何が乗るのかを書いておきます。実際の断面図にも書きます。

6 防火設備の凡例

最後に防火設備の凡例です。試験によって別の凡例になるかもしれませんが、これが無いだけで一発不合格ともいわれています。練習の時と同じでそのまま書くのもやめましょう。本番の時は別の書き方を指定されるかもしれません。

エスキス用紙

課題文の読み込み、書き込みができたら、エスキス用紙に移ります。

まずA2のエスキス用紙を4等分に折り目を付けます。左上で条件整理や大まかな検討。左下で各階のプラン検討。右上がエスキス図になります。右下は使いません。

この理由は、平成29年にエスキス用紙に敷地図が記載されたことがあるためです。めいっぱいに使って練習して、本番で3/4しか使えないとなった場合にも対応できるようにするためです。各場所ごとに解説していきます。

1 条件整理

① 各面積などの条件を再度記載します。敷地面積、建蔽率、建築面積、延べ面積、階数と高さの算定です。

1階からパラペット高さまでの高さの場合、道路斜線に必要なへり空きを計算します。

② 各階の面積の振り分けをします。まず第一印象でこの階に計画したいなという室、部門をそのまま入れてみます。面積は課題文で計算した部門ごとの面積です。今回は各階の面積のバランスが500㎡前後になりましたので、そのまま行くことにしました。

③ 建築面積とは別に駐車場等を配置した際の建築可能面積を計算します。北側にHPを置くと考えると6m開けたい。SP側は3mで良いが、先ほどの道路斜線で4~5m必要と分かったので、その分空けておく、それ以外は2mとする。残った44m×28m=1,232㎡が建築可能面積(<建築面積の上限1468.8㎡)

横44mは6mスパンの場合7スパン(余り2m)、7mスパンの場合6スパン(余り2m)

縦28mは6mスパンなら4スパン(余り4m)、7mなら4スパン、8mなら3スパン(余り4m)とそれぞれの場合どのくらいスパン数が取れるかを考えておく。(ここではスパン決定はしません)

④ ざっくりとした配置と各室・パーツの面積を整理する。歩道からメインエントランスを取りたい。入ったらEH(エントランスホール)があって、それを受付などをする管理(か)部門がある。それ以外が共用部分。ユニットの必要面積を確保するには、各スパンの場合どうなるかを書いてみる。

⑤ 室数を確保するためには何スパン必要かを考える。今回筆者の場合、横7スパン欲しいと思ったので、6mを採用。縦は、7・9・7か9・6・9かどちらでもいいが3スパンが収まりやすそうと考える。

⑥ 6マスグリッドで大まかに配置を考える。各部門の面積から1マスなのか2マスなのか埋めてみる。コアは管理部門から1本、メインで1本を持ち上げる。どこにあるとバランスがいいかも検討。

2 各室を埋めていく

左下部分に移ります。

方眼紙の横2マス縦2マスが1スパンと考えて、3層分の枠組みを書きます。

まだざっくりで良いです。ここに時間かけすぎちゃう人がエスキスが遅い印象です。

条件のいい部分にメインの部屋を並べていく。廊下をまっすぐ通す。細かい部屋は無視です。

ここで入るなと思ったら1/400に移っちゃいます。

3 エスキス図作成

右上のエスキス(1/400)を作成していきます。

敷地を書きます。1/400なので1目盛2mです。その後、柱をわかりやすいようにマーカーで丸付けます。

開口部(ガラス)は青マーカー、断面図は躯体を全てマーカーで書いちゃいます。今回は地盤改良があるのでそれもわかるように。

オレンジ色の線は延焼ラインです。それに伴って防火設備も書いておきましょう。

右下面積表の計算式もここで書いておきます。作図はまず面積表から書きますので。

まとめ

今回は実際に本試験で使用した課題文、エスキス用紙を公開して、課題文のチェックの仕方、エスキス用紙の使い方、エスキス方法をまとめてきました。

正直、設計製図の解き方に正解は無いと思ってます。それぞれの学校や講師の教えに沿って進めてほしいとは思っていますが、うまくいかなくなったときにこういった考えもあると参考にしていただけたらと思っています。

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