一級建築士 設計製図試験はなぜ手書きなのか。

おはようございます。今年度の一級建築士試験の受験申込の時期になりました。今回は、試験経験者のみならず一級建築士試験の概要を知った人は全員が思ったことについて自分なりの考えを書いていきたいと思います。

なぜ一級建築士試験の設計製図試験は、今も手書きなのか。

一級建築士になるためには

まずは、一級建築士試験の概要から。詳しくは以前書いた記事をご覧いただきたいのですが

一級建築士試験は、国家資格・一級建築士になるための試験です。年に1回のみ行われ、1次試験としてマーク式の5科目の学科試験が行われます。この試験を突破した者のみ2次試験の設計製図試験を受けられます。

この設計製図試験ですが、名前のとおり要求された建物で、要求された室などの条件を満たし、法律をもちろんクリアして1つの建物の図面を作成する試験です。

受けたことない人から見たら、建築士試験っぽいなと思われるかと思いますが、この試験手書きで図面を作成します。

昔は今のようにパソコンでCADというソフトがなかったものですから、全て手書きで図面を作成していました。ただ現在は、図面を描くほぼすべての方がCADにて図面作成をしている現状です。

(ごく稀に昔ながらの工務店の方は今でも手書きで作成してたりしますよね。)

ではなぜ手書きで行うのか

本題に入ります。実務ではほぼ全員がパソコンにてCADソフトを使い作図しているのにも関わらず、建築士資格の最高峰である一級建築士試験はなぜ今も手書きで図面を描かせるのかという問題です。

これには明確な答えはありません。しかし筆者が考える以下の3つの理由があると思います。

① 試験元の対応がめんどくさい。

まず1つ目ですが、この試験を行っているのは国土交通大臣です。実際の試験の実務に関しては公益財団法人建築技術教育普及センターというところが行っており、広く言うとどちらもお役所です。

役所仕事というものは新しいものを嫌います。前例踏襲が原則で、昨年やった通り仕事を進めていきます。よって現在行われている試験内容(手書き試験)を変更することは、よっぽどのことがないと行いません。

② 試験の公平性

2つ目ですが試験の公平性についてです。この理由は結構大きいと思います。

先ほどほぼすべての人がCADを使用していると書きましたが、このCADソフト、いくつも種類があるのです。

代表的なもので挙げますと、AutoCAD、Jw_CAD、VectorWorks、DRA-CADなど。

筆者は設計事務所にいたわけではないのであまり詳しく操作を熟知しているわけではありませんが、これまで計3つのCADソフトを使用したことがあります。もちろんどれも操作方法が異なります。無料のCADよりは有料のCADの方が便利です。

では、どのCADソフトを建築士試験に使用していいことにしますか。

もちろんどれでもいいという意見もあると思いますが、CADによって有利不利があるとすると国家資格試験としての公平性が保たれません。

また、CADの問題がクリアできたとして、使用するパソコンは私物の持ち込みでしょうか。その場合、カンニング対策はどうしましょう。

試験元の支給だとしたら、センター試験の英語リスニングのように不具合があった場合はどうしましょう。1教室に何十人も同時に電源を確保するのはどうしましょうか。

など他にも挙げられると思いますが、試験の公平性と実現性の観点から難しいと思われます。

③ 試験の本質がそこではない。

最後の理由です。筆者はこの理由を推したいです。

一級建築士というものは建築士の中で最高の資格です。もちろん構造一級とかはありますが、一級を持っていればどの建物も設計していいよ。という限定解除された資格です。

そこでどんな人が一級建築士にふさわしいかを見極めるのがこの試験です。

皆さん今時手書きで図面を描かせるな。とかおっしゃいますが、そんなこと言うなら

わずか6時間30分で、施主からの要望をくみ取り図面を描かせることの方が現実離れしていると言うべきです。

実務に合うように試験をしろというのであれば、そもそもの試験というのが間違っていることになります。

あくまで資格のための試験なのです。なので、なぜ手書き製図としているかというと、それは手段でしかないからです。

試験元は限られた6時間30分の中で、施主からの要望を漏らさず読み取る能力と、法律をしっかり守れる人を一級建築士にしたいんだと思います。

さらに言うとこの試験。特に設計製図試験はめちゃくちゃ大変です。もちろん皆さん仕事をされています。建築業界といえばどの会社も業務量が多く残業されてると思います。そんな中でもスケジュールを立て、仕事をこなしつつ、平日に3~4時間、土日に10時間以上の勉強を3か月から半年間続けられることができる処理能力の高い人を一級建築士にしたいんだと思います。

まとめ

これまで一級建築士試験の設計製図試験がなぜ手書きなのかということについて語ってきました。

まとめるとCADを試験に組み込むことの難しさと、試験で問われるのが図面作成能力ではないというのが理由ではないかと考えられます。

このことに関連して試験対策として伝えられることがあるとすると。

① 図面の綺麗さは、合否に直接関係しない。

② 実務の考えを試験に適用させてはいけない

という2点アドバイスできると思います。

①についてですが、筆者は設計製図試験対策として、2年大手予備校に通っていました。毎年最初の方に話題になるのが、図面の綺麗さについてです。設計製図の採点をした人から話を聞いたこともありますが、おそらく綺麗さは点数に直結しません。予備校の自己採点チェックシートにも大きく減点はありません。もちろん採点する人も人間なので、見づらい図面だと「なにかミスしてるんじゃないか」と疑った目で図面を見られることになります。私は予備校の教室の中でも図面、字共に汚い方でした。が、濃くはっきり書くことに意識をもって描いていました。教室内で図面の見せあいをして、どの図面が見やすいかというアンケートを取ったところ、私の図面に票を入れてくれた人が何人もいました。綺麗に越したことはありませんが、そんなことに時間を取られるよりは、プランをよくすることに時間を使うべきです。

 いつか機会があれば合格したときの再現図面をこちらにアップできたらと思います。

次に②ですが、設計を実務として行っている方が特に陥りやすいポイントです。実務だったら普通にしていいことも、設計製図試験では避けるべきポイントがいくつかあります。

例えば、各室の面積で、実際にはこんなに広くなくていいよね、狭くなくていいよね。とか設備室は2階以上に普通に設けるけど、試験対策としては機器の更新を考えて1階だよね。この設備配管ルートは普通じゃありえないけど、平面図には出てこないからここにPS書いておくか。など

建築の勉強と思わないで、試験を解くための勉強をしていただければと思います。

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